Google Mapsに新機能「Ask Maps」が登場しました。地図アプリに話しかけるように質問すると、AI(Gemini)が文脈を汲んで店舗やスポットを推薦してくれる、対話型の検索機能です。
2025年から段階的に展開が進み、現在は日本国内でもモバイルのGoogle Mapsアプリ上で確認できる状態になってきています(ケータイWatch「『Google マップ』が大幅アップデート、Geminiと融合」)。
この機能、一見すると「検索の新しい体験」という話ですが、実は店舗を運営している事業者にとっては、Googleビジネスプロフィール(以下、GBP)の意味合いを一段上げる出来事です。今回はその理由と、今からGBPをどう整えておくべきかを整理してみます。
Q&A機能の廃止とAsk Mapsの登場はセット
今回の動きをより正確に捉えるために、前提となる変化を一つお伝えしておきます。
GBPにあったQ&A機能(ユーザーが質問を投稿し、事業者や他のユーザーが回答する機能)は、2025年11月3日にAPIが廃止され、2025年12月3日からは公開Q&A機能自体が段階的に廃止されました(Google公式の開発者向け告知、Search Engine Roundtable)。
そしてその代替として用意されたのが、Ask Mapsです。ユーザーが店舗に質問したいとき、従来は過去のQ&Aを辿っていましたが、これからはAIがGBP・レビュー・Webサイトなどを参照して、リアルタイムに回答を生成する仕組みに変わりました。
つまり、Q&A廃止とAsk Maps登場は一体の動きです。静的なQ&A欄は消え、AIが動的に答えるようになった。この変化が、事業者側のGBPとの向き合い方を大きく変えます。
Ask Mapsは何を参照しているのか
Ask Mapsが何を見て店舗を推薦しているのか。海外のローカルSEO系メディアの調査(Search Engine Land、Rio SEO、ALM Corp)と、Google自身の説明を突き合わせると、参照している情報源には階層があることが見えてきます。
① GBP(Googleビジネスプロフィール)が基盤
カテゴリー、ビジネス説明、サービス・商品、属性、営業時間、写真、動画、投稿——GBPに登録されているほぼ全てのフィールドが、AIの入力になっています。「不完全なGBPは、Ask Maps時代には見えないGBP」という言い方をしている海外メディアもあります。
② レビューが、これまで以上に重要な情報源に
Q&A廃止の影響で、レビューの相対的な重要度が大きく上がっています。Ask MapsはレビューをAI回答の主要なソースとして参照していて、レビュー本文に含まれる具体的な言葉(「静かで集中できる」「駐車しやすい」「子連れでも安心」など)が、状況別の推薦を決める語彙になります(North County Digital、Local Clarity)。
2026年の日本の業界調査では、100文字以上の詳細なレビューが有効と言われています。
③ Webサイト・外部の言及
複雑・高額な判断(専門サービス、医療、リフォームなど)になるほど、AIはWebサイトや外部の情報源も参照するようになります。NAP情報(店舗名・住所・電話番号)の一貫性は、引き続き基本です。
AIの参照は、コントロールできない
ここで一つ、大前提の話をさせてください。
AIがどういうふうに情報を参照するか、どういうロジックで推薦を決めているかは、私たち事業者側からはコントロールできません。そしておそらく、コントロールできないままでいいのだろうと私は思っています。もし完全にコントロールできてしまったら、それはもう推薦ではなく広告の並びになってしまうからです。
Googleも「Ask Mapsの明確なランキング要因リスト」は公開していません。これは意図的に公開していないというより、AIの判断プロセス自体が可変で、固定的な『要因リスト』として提示しにくい性質のものだからだと思います。
ただ、ここで重要なのは、「コントロールできない」と「何もできない」は違う、ということです。
コントロールできないが、整えることはできる
AIが何を参照しているかは見えています。だからこそ、何を参照させるかは冷静に整えることができます。
参照される情報を、整理された・充実した状態にしておく。情報源として信頼できるものにしておく。これは、AIの裏側を覗き込んで操作するのとは全く違う行為です。いわば、AIが見にくる「入口」を、きちんと開けて片付けておく作業です。
そして、この「入口」として、Googleがすでに用意してくれているフォーマットがあります。それがGBPです。
GBPは、Googleが用意したフォーマット
GBPは、ただのビジネス情報登録フォームではありません。Googleが「このフィールドを参照して、ユーザーに情報を届けます」と明言しているフォーマットです。
カテゴリーを設定する欄があるのは、Googleがカテゴリーを見るから。属性を登録する欄が増えたのは、Googleが属性を見るから。写真やサービス情報を登録するフィールドがあるのは、Googleがそれらを見るから。
AI時代の情報最適化というと、難解な構造化データの実装や、最新のAI向けの特殊な対策を思い浮かべがちです。しかし実際には、Googleがすでに「ここを見ます」と言っているフィールドを素直に埋めることが、もっとも確実な施策です。
これは、ヒアリングにおいて「相手に何を聞き出してほしいか」を整理するのと似ています。ヒアリング記事でも書いたのですが、情報は、それが届くべき相手に向けて設計すると、ちゃんと機能します。GBPは、Googleという「聞き手」に対して情報を設計する場所です。
GBPを整えるときに意識したい視点:「利用者になりきる」
具体的にGBPのどのフィールドを整えるべきか、というチェックリストはすでに多くの記事で紹介されています。ここでは、少し違う角度で、「利用者になりきって整える」という視点でポイントを整理します。
利用者は、Google MapsやAsk Mapsに何を期待しているか。自分がその利用者だったら、どういう情報が揃っていると選びやすいか。この視点で一度、自店のGBPを見直してみると、整備の優先順位がはっきりします。
カテゴリー:「何屋さんか」を利用者の言葉で
プライマリカテゴリーは、ランキング要因の中でも特に強いシグナルの一つです。業界の内部用語ではなく、利用者が自然にその業種を呼ぶ言葉で選ぶのが基本です。セカンダリカテゴリーも最大限に活用して、複数の検索意図に届くようにしておきます。
ビジネス説明:「どんな利用者に、どんな状況で役立つか」
ビジネス説明に店舗の歴史やこだわりを書きたくなる気持ちは分かりますが、利用者が読みたいのは「自分の状況にこの店が合うかどうか」です。
誰が、どんなとき、何を目的に来るのかを具体的に書きます。「こういうシーンで役立ちます」「こういう方におすすめです」という要素を意識的に入れておくと、Ask Mapsが状況別の推薦をするときの手がかりになります。
属性・サービス・商品:「候補入りの条件」を埋める
属性は2026年に項目が大幅に増え、30項目以上の設定が推奨ラインになっています。「Wi-Fiあり」「子連れOK」「バリアフリー対応」「駐車場あり」など、利用者が検討条件として挙げそうな項目を漏れなく埋めます。
サービスと商品も同様です。利用者が「これを扱っているか?」を確認したくなりそうな項目を、具体的に登録しておきます。
写真・動画:「利用者が事前に確認したいもの」
写真は、店内・外観・スタッフ・商品・サービスの様子など、10〜15枚以上が推奨されています。
ここで意識したいのは「綺麗な写真を並べる」ではなく、「利用者が来店前に確認したい情報が写真で分かるか」です。駐車場の入口、店内の雰囲気、席の間隔、商品のサイズ感など、「事前に見ておきたい」情報を写真で提供します。
動画も2026年以降、重要度が上がっています。月1〜2本の短尺動画が有効と言われています。
投稿:「更新されている店である」ことを示す
投稿機能は、ランキングへの直接的な影響は大きくないと言われていますが、情報の新鮮さのシグナルとして機能します。イベント、新商品、お知らせなど、定期的に発信しておくと、活動している店であることがAIにも利用者にも伝わります。
レビューは、AI時代の最重要ソースに
最後に、レビューについて少し踏み込んで書きます。
先述のとおり、Q&A機能が廃止されたことで、レビューは「事業者以外が書くコンテンツ」の中でほぼ唯一、AIに直接参照される情報源になりました。これは事業者側の視点で見ると、レビューの重要度がこれまで以上に増したということです。
海外事例で印象的なものを一つ紹介します。英国ブリストルのカフェでは、ヴィーガン対応についてビジネス説明に「プラントベースケーキ」と複数回記載し、かつ複数のレビューで「ヴィーガンメニューがある」と言及されていたため、Ask Mapsで「ヴィーガンオプションがあるか?」と聞かれたときに、AIが自信を持って「はい」と回答したそうです(Local Map Booster)。
逆に言うと、レビューにも自社情報にも言及がない項目は、たとえ実際に提供していても、AIに「情報がない」「提供していない」と誤認されるリスクがあるということです。
レビューで意識したい3つのこと
① 「語彙の多様性」を育てる
「丁寧」「早い」「静か」「広い」「親切」「清潔」——こういった具体的な形容詞が出てくるレビューは、AIが状況別の推薦をするときの強い手がかりになります。星の数や件数そのものよりも、どんな言葉でレビューが書かれているかが効きます。
依頼する際に「どんな場面が良かったかも書いていただけると助かります」と添えるだけでも、レビューの粒度は大きく変わります。
② 「事業者側から引き出しにいく」発想
従来、Q&Aがあったときは、事業者は「利用者が知りたいこと」を自分で書き出して公開することができました。Q&Aが廃止された今、事業者は「レビューの中に、利用者に伝えたい情報が含まれるように設計する」必要があります。
たとえば、ヴィーガン対応・ペット同伴可・早朝営業・駐車場あり、など、訴求したい特徴を来店時にさりげなく会話に出すだけでも、後から書かれるレビューの内容は変わります。
③ レビュー返信も情報源になる
見落とされがちですが、事業者によるレビュー返信もAIの参照対象です(Local Clarity)。ネガティブなレビューに誠実に返信したり、誤解を訂正したり、新しい情報を補足したりすることは、AIが持つ情報を間接的に補強する行為になります。
返信の丁寧さそのものがブランドイメージを作るという意味でも、レビューへの返信は続ける価値があります。
まずは「入口」を整えることから
Ask Mapsが日本で本格展開する時期はまだはっきりしませんが、「準備しておく意味はあるのか?」と思われるかもしれません。
ただ、ここで整理しておくと、Ask Mapsへの対応=GBPを整えることです。そしてGBPを整えることは、Ask Mapsがなくても、現時点のGoogle Maps・ローカル検索で既に効いています。
つまり、Ask Mapsの登場は「GBPをちゃんとやっておく理由」が一つ増えただけとも言えます。AIが参照する入口として、すでに効いているフォーマットを、素直に整えておく。それだけです。
LLMOやAI検索対策として何か新しいことを始める前に、GBPの整備状況とレビューの語彙を一度点検してみてください。多くの場合、やるべきことは目の前にすでにあります。
GBPの整備は、項目が多く、一度にすべて着手するのは現実的ではないかもしれません。自社のGBPがいまどのくらい整っていて、どこから手をつけるべきか、情報設計の観点から整理するご相談もお受けしています。
参考にした記事
Ask Mapsの発表・概要
Q&A機能の廃止
- Google for Developers「Q&A API Change Log」
- Search Engine Roundtable「Google Changing Q&A Feature In Google Maps For Ask」
- North County Digital「Google Business Profile Q&A Discontinued: What to Do Now」
Ask MapsとGBP・レビューの関係
- Search Engine Land「Google Ask Maps is moving from listings to recommendations」
- Rio SEO「Ask Maps Gemini integration: How AI is deciding」
- ALM Corp「Google Ask Maps: How AI Recommendations Are Changing Local Search」
- Jay Mehta Digital「Google Maps Ask AI Mode: What Businesses Must Know」
- Local Map Booster「Google Is Removing Q&As from Business Profiles in 2025」
- Local Clarity「Google Removing, Replacing Q&As Section」
GBP最適化の具体論(日本語)