AI検索時代に「基本に戻る」という情報設計

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AI検索時代に「基本に戻る」という情報設計

久々に、セミナーに参加してきました。

2026年6月5日、福岡で開催された「AI検索時代に中小企業が勝つ方法〜加速するゼロクリック検索を味方につける〜」というセミナーです。登壇は、SEO界隈では知らない人はいないであろう住太陽さん。

支援側の人間として参加した理由は、大きく三つ。住さんがこのテーマをどう捉えているのか知りたかった。近日発売の書籍に関連した話が聞きたかった。あと、本人に会ってみたかった(サイン貰えるか試すため)。

面白いのは、セミナーを通じて得たものです。技術的なテクニックではなく、むしろ逆に「設計の原点に立ち返る必要性」という、ある意味で古くて地道な話が、いちばん響いてきたということでした。

セミナーから見えた、AI検索の転換点

「検索結果」は「リンク先リスト」から「回答」へ

セミナーで印象的だった指摘があります。検索エンジン自体の役割が、本質的に変わろうとしているということです。

これまでの検索エンジンが返していたものは、「検索結果」という名前をしながら、実は「リンク先のリスト」でした。ユーザーはそのリストから自分で選び、クリックして、各ページで情報を探っていた。ウェブサイト側からすると、「検索結果に表示されること」が、ユーザーとの接点だったわけです。

ところが AI 検索の時代になると、検索エンジン自身が「回答」を返すようになる。ユーザーが本来探っていた「最終的な答え」を、検索エンジンが要約して提示してくれる。

これはもう「検索結果の表示方法が変わった」という話ではなく、検索エンジンが果たす役割そのものが変わってきた、ということです。

ゼロクリック検索の加速は、もう起こっている

当然のことながら、この変化によって加速するのが「ゼロクリック検索」です。ユーザーは検索結果をクリックすることなく、検索エンジンの提示した回答で終わる。

これまで、技術的には実現していても「ユーザーが実際に使うのだろうか?」という疑問があったり「出てくる回答がイマイチ」ということが課題だと考えられていました。でも、ユーザーの慣れが思ったより加速しているという事肌感があるということ。わりとシンプルに使ってる人が多いような感じがあること。つまり、ゼロクリック検索は加速していると言えるのです。しかもそれは、意外と早く・・・です。

一次情報と評判の「扱い分け」が問われる

もう一つのポイント。「事実(一次情報)」と「評判/評価(第三者情報)」をどう扱い分けるか、という問題です。

AI 検索の時代において、この二つをどう丁寧に区別するか。それだけじゃなく「どちらが自分たちでコントロールできるのか、できないのか」を理解するか——これが情報設計の上で重要になってきそうです。

不思議な感覚——「原点に戻っている」

セミナーの内容を一通り受けた時の印象が、不思議でした。「原点に戻っている感じ」——ただし、これは「SEO的な原点」ではなく、もっと根本的な「人の間での情報のやり取りの原点」です。

インターネットがなかった時代を想像してみてください。商売をしている人たちは、どうやって自分たちを見つけてもらうか、どうやって商売をするかを考えていました。

その答えはシンプルでした。

  • ちゃんと情報を伝える
  • 贔屓にしてくれるお客さんが評判を上げてくれる
  • その評判が新しいお客さんを連れてくる

これです。地道で、泥臭くて、けれど確実なプロセス。

インターネットが出てくると、その情報が多くの人に届く環境が整いました。「検索」という形で、より確実に届く環境も作られた。そこには「キーワード」という概念が基本になりました。便利でした。その状態が長く続きました。

でも、考えてみてください。これは実は「技術が、もともとの人と人の情報やり取りに追いついていなかった」ことの表れじゃないでしょうか。「単語による検索」という、ある意味で限定された手段だったから、その凄さが見えていただけかもしれない。

AI が自然言語を理解する時代へ

そこに AI が登場します。自然言語を理解できるようになったこの技術が、インターネット前のやり取りに、ぐっと近づいてきた。

つまり、インターネットによる「広がり」と、インターネット前から存在していた「人が行う伝播の力」が、掛け算できる時代がきたということです。

では、そこで僕たちは何をすべきか。

セミナーを通じて得た答えは、シンプルでありながら厳しいものでした。

小手先のテクニックではなく、地道で泥臭いことをやる——それだけです。

「ハイテク」の上に乗る、本当の仕事

AI 検索という言葉から連想されるのは、どうしても「ハイテク」な感覚です。最新技術、難しい概念、複雑な対応——そういったイメージを持つ人は多いでしょう。

ところが、セミナーの結論に置かれていたのは、真逆のメッセージのように聞こえました。「AI 検索だからといって何か特別なことをやる必要はない(今の所)」というようなことが、むしろ強調されていたように感じました。

実際、住さんが最近出版した『AIで集客する仕組み ~クリックされない時代に選ばれるAI検索のセオリー~』でも、その中心に据えられているのは「地味で地道なこと」です。

つまり、こういうことなんだと思います。

ハイテクは、あくまで「舞台」にすぎない。その舞台の上で演じるのは、インターネット前から変わらない、丁寧で地道な情報設計。呼び方は変わっても、やるべきことの本質は同じ。

セミナーに参加する前は、新しい技術への対応に気が向いていました。でも、帰ってきた時に感じたのは、むしろその反対。「もっと基本を大事にしなくちゃいけない」という、シンプルな気づきでした。

自分のやっていることとの整合性

セミナー参加を通じて感じたのは、率直に言って「安心感」でした。

今やっている各種記事の投稿について、似たようなことを言えているんだな、と。

昨年8月に発表した「SEO/AEO/LLMOなどあらゆる”O”」という記事では、こう書きました。

SEOはAI時代に形を変え、AEOやLLMOなど新たな最適化も登場。だが本質は相手に届く丁寧な最適化=”O”である。

この「丁寧な最適化」という考え方は、セミナーで住さんが伝えていた「地道で泥臭い」というメッセージと、完全に一致していた。

技術は進化する。環境は変わる。検索エンジンもアップデートされ続ける。

けれど、その中で問われ続けるのは、結局のところ「相手にちゃんと届く情報設計ができているか」ということなんです。

AI検索時代だからこそ、基本に立ち返る

セミナーから帰ってきて、改めて思うのは、AI 検索という新しい環境は、実は「情報設計の基本に立ち返る、良い機会」なのだということです。

テクニカルな対応も必要でしょう。新しい知識も必要でしょう。ツールやプラットフォームの使い方を学ぶこともあるでしょう。

けれど、その前に。立ち止まって、問い直すことが必要なんじゃないか。

「相手に何を、どのように届けるのか」を、丁寧に考え直す。インターネット前の「人の間での情報やり取り」の本質に立ち返る。

地道で泥臭い、けれど確実な設計アプローチが、AI検索時代にこそ問われるのだと思います。

著者:稲本浩介

著者:稲本浩介

コミュニケーション設計所代表 / 情報アーキテクト

「わかりやすく伝えるにはどうしたらいいか?」を常に考える福岡の情報アーキテクト(IA)。前職では主にWebサイト制作にディレクターやエンジニアとして関わり、ホームセンターや老舗菓子メーカーのEC事業の構築および運用にゼロから携わる。その活動は、ウェブサイトの枠に限定せず、動画やイベント実施などコミュニケーションという視点でのわかりやすさを追求。大学や社会人講座、企業における講演経験もあり多方面にて活動中。

▶ X(Twitter):@sevenina