わかっていたはずなのに見えていなかった―情報設計と外部視点の価値
公開日:2025/11/06
この記事をざっくりまとめると・・・
BtoBマーケティングの講演会で体験した「わかっていたのに見えていなかった」瞬間。外部の視点がウェブサイトの見直しにもたらす価値と、情報設計における「伴走」の本当の意味について、実体験をもとに綴ります。
・・・ということが書いてあります。
先日、BtoBのマーケティングに関する講演会に参加しました。
講師が語る内容は、一般的なウェブサイトとBtoBサイトの違いや、具体的な施策、そして「そもそも論」と呼ばれる根本的な視点についてでした。正直なところ、私自身が普段から意識している内容が多く、「ああ、やはりそうだよな」と再確認する場面が多かったように思います。
ところが、講演が終わって自社のサイトを見返したとき、不思議なことが起きていました。
これまでも改善の視点で何をどうしたらいいか検討しながら見ていたサイトなのですが、同じサイトを見ているはずなのに、見える景色が全然変わっていたのです。
「わかっている」と「形になる」の違い

インフォメーションアーキテクト(IA)という職種柄、私は日頃から物事の根幹や「そもそも」を考えることを意識しています。今回の講演内容も、思考や普段の行動という面では「再認識」に近いものでした。
しかし、その思考が他者の言葉として、またスライド資料という「絵(ビジュアル)」として、耳や目に飛び込んできたとき、何かが変わりました。
頭の中で「なんとなくわかっていた」「感じていた」ことが、具体的な言葉や図という形を得て、自分の中にアップデートされて入ってきた感覚とでも言えばいいでしょうか。形作られた、という表現が近いかもしれません。
そして帰社後、自社のウェブサイトを見てみると、これまで漠然と「どこか煮え切らないな」と感じていた部分が、急に焦点を結び始めたのです。いや、その漠然としたことすら感じることのなかったところが気になってくる状況がありました。
見出しの付け方、ファーストビューのあり方。そして何より、相手が欲しい情報と自分たちが示したい情報の優先度がズレていたことに気づきました。正直ちょっとしたズレなのですが、面白いもので気になり始めるとその小さなズレを大きく感じてしまうものです。
まだ改善策まで至っているわけではありません。しかし、課題が絞られ、明確に見えてきた。これは大きな変化でした。
なぜ外部の視点が必要なのか

今回の体験を通じて、改めて感じたことがあります。
それは、当事者は近すぎて見えないということです。
見ていないのです。
見ていないから、それは「そこにない」のと同じなのです。
自分のサイト、自分のサービス、自分の会社。毎日向き合っているからこそ、当たり前になっていることがあります。社内で使われている言葉が、いつの間にか「言葉だけ」行き渡っていて、その意味するところへの理解や意識が薄れていることもあります。
「コミュニケーション設計」「伝わる設計」といった言葉を私たちは掲げていますが、その言葉の意味を本当に体現できているのか。外部の視点、第三者の言葉を通して初めて、自分たちを客観視できることがあるのです。
今の時代、やろうと思えば自分たちで色々できてしまう便利なツールは数多くあります。しかし、それはあくまでツールの話です。
重要なのは、どんな視点でそのツールを使うか。そして、自分たちでは気づけない盲点をどう発見するかです。
「伴走」の本当の意味

私たちコミュニケーション設計所は、「伴走」という言葉を大切にしています。
ただ、この「伴走」という言葉には注意が必要だと感じることがあります。伴走を「丸投げ」や「代行」と捉えられてしまうケースです。
伴走とは、クライアントも一緒に走ってくれることだと私は考えています。私たちが横で並走しながら、新しい視点を提供し、気づきを共有する。クライアント自身も考え、動く。そうした協働があって初めて、本当の意味での改善が生まれるのではないでしょうか。
また、外部の意見を取り入れる際には、もう一つ気をつけなければならないことがあります。それは、その提案が「営業的な側面」から来ているのか、それとも「本当にその企業のため」から来ているのか、という点です。
ビジネスである以上、完全に切り離すことはできません。しかし、少なくとも私たちは「貢献における対価」という視点を持ち続けたいと考えています。売るための提案ではなく、本当にその人・企業のためになる提案を届けること。それが、第三者として関わる者の責任だと思うのです。
情報設計の専門家として提供できる価値

私が持つインフォメーションアーキテクトとしての知見、ウェブディレクターとしての知見、企画屋としての知見。これらは専門性を持ちながらも、第三者的な視点で物事を見ることができる強みです。
企業と消費者の間のコミュニケーションをより良いものにするために、新しい視点を提供すること。それが、私たちコミュニケーション設計所の仕事なのだと、今回の体験を通じて再発見しました。
「わかっていたはずなのに見えていなかった」
この気づきは、誰にでも起こりうることです。そして、その盲点を外すことができたとき、大きな可能性が広がります。
もしあなたのウェブサイトや事業に「どこか煮え切らない」「このままでいいのか」という感覚があるなら、それは新しい視点を取り入れるタイミングかもしれません。
私たちは、そのお手伝いができればと思っています。つくる前に、一緒に考える。考えるところから、一緒に。その先に、「伝わる」が生まれると信じています。

著者:稲本浩介
コミュニケーション設計所代表/情報アーキテクト
「わかりやすく伝えるにはどうしたらいいか?」を常に考える福岡の情報アーキテクト(IA)。前職では主にWebサイト制作にディレクターやエンジニアとして関わり、ホームセンターや老舗菓子メーカーのEC事業の構築および運用にゼロから携わる
。その活動は、ウェブサイトの枠に限定せず、動画やイベント実施などコミュニケーションという視点でのわかりやすさを追求。大学や社会人講座、企業における講演経験もあり多方面にて活動中。
▶︎ X(Twitter): @sevenina



