前回の記事で、実店舗とECサイトはアプローチが違うという話をしました。でも、それは一つの側面です。実店舗で培ってきたものの中には、ECに持ち込めるものもたくさんあります。
むしろ、持ち込めるのに持ち込んでいないとしたら、それはもったいない。
ECには、リアルタイムの接客がない
実店舗では、お客さんとスタッフがその場でやりとりをします。商品を手に取りながら質問をして、スタッフが答える。表情を見て、言葉を選ぶ。その場の空気を読みながら会話が進んでいく。
ECサイトには、これがありません。お客さんがページを開いたとき、そこにあるのは事前に用意された情報だけです。質問に答えてくれる人もいなければ、背中を押してくれる一言もない。
近年、AIチャットボットやライブコマースといった形で、ECにもリアルタイムに近い接客を実現しようとする動きは出てきています。ただ、実店舗の接客と同等のものかというと、まだまだ発展途上というのが正直なところです。対話の自然さ、その場の空気を読む力、雑談の温度感——そういったものを完全に再現するには、まだ時間がかかりそうです。
だからこそ今は、ECサイトに「接客に代わる情報」をあらかじめ埋め込んでおくことが重要です。お客さんが疑問に思いそうなことへの答え、選ぶときの基準、背中を押す言葉。それらを、ページの中に織り込んでおく。
では、その情報はどこから持ってくるのか。
宝庫は、実店舗の接客の中にある
実店舗では毎日、スタッフとお客さんの間でやりとりが生まれています。商品の説明、よく聞かれる質問、背中を押す一言。それらは長年かけて現場で積み上げてきたものです。
ところが、そのやりとりの多くは「その場の生き物」として消えていきます。スタッフは無意識に会話をしていて、「これが情報になる」「これがECのコンテンツに使える」という意識が生まれにくい。
結果として、ECサイトには一般的な商品説明しか載っていない。その店ならではの言葉が、どこにもない。
「たわいもない話」の中に、ヒントがある
例を出してみます。
実店舗でお客さんが商品を手に取ったとき、スタッフは自然に声をかけます。「贈り物ですか?ご自宅用ですか?」。贈り物だとわかれば、「男性向けですか、女性向けですか?」「お子さんへ?大人の方へ?」と会話が続いていく。
そして、「子どもの誕生日で」という返答がきたら、「おいくつになられるんですか?」と雑談になる。
この「おいくつになられるんですか?」には、答えを必要としていません。サービスに直接関係する情報でもない。でも、この一言があることで、買い物の体験が変わります。お客さんは「ちゃんと話を聞いてくれている」と感じる。
こういう「たわいもない話」が、実店舗の接客には自然に存在しています。
再現はできなくても、活かすことはできる
ECサイトで「おいくつになられるんですか?」という雑談を再現することはできません。リアルタイムのやりとりがない以上、そこは割り切るしかない。
ただ、この雑談から得られる気づきをECに活かすことはできます。
「贈り物の場合、年齢を気にするお客さんが多い」という傾向が実店舗の接客から見えているなら、ECサイトに「年齢別のおすすめ」という導線を作ることを検討できます。雑談そのものは再現できなくても、雑談の中にあったヒントをコンテンツ設計に活かすことはできる。
「接客を「情報」として見る視点が、ECを変える。」
実店舗を持つことは、アドバンテージだ
実店舗でのやりとりは、人と人が会話や仕草を経てコミュニケーションをしているものです。そこにはデータでは得られないものがある。お客さんが何に迷っているか、どんな言葉に反応するか、何を聞いてから決断するか。数字には現れない、生きた情報です。
実店舗を持つということは、その「データでは見えない情報」へのアクセス権を持っているということです。ECだけの事業者にはない、アドバンテージです。
ところが多くの場合、ECサイトを作るとき、実店舗に聞きに行く発想が生まれにくい。「ECは別の事業だから」という思い込みが、その橋を渡ることを妨げている。
実店舗の現場で積み上げてきたものを、ECに持ち込む。その発想を持つだけで、ネットショップの設計や改善の可能性はぐっと広がります。
まとめ
実店舗の接客は「その場の生き物」で、情報として意識されにくい。でも、そこには長年かけて積み上げてきたお客さんへの理解が詰まっています。
ECサイトに足りない「接客に代わる情報」を探すとき、まず実店舗の現場に目を向けてみてください。データには現れない、その店ならではのヒントが、必ずあるはずです。
実店舗の接客をECにどう活かせばいいかわからない、どこから手をつければいいかわからない、という場合はご相談ください。お気軽にどうぞ!!