実店舗を持っている会社が、ネットショップ(EC)を始める。あるいは、すでにあるECサイトをリニューアルしたい。
そういうとき、話はだいたい「何を載せるか」「どう集客するか」「どのカートシステムを使うか」といった具体的な手法の話に向かいます。もちろん、どれも大事なことです。
でも、その前にひとつ、決めておいてほしいことがあります。
このネットショップは、何の店ですか?
「いや、うちの商品を売る店ですけど」と思われるかもしれません。でも、ここで聞きたいのは、もう少し手前の話です。
実店舗には、最初から「役割」がある
実店舗をやっていると、その店が「何の店か」は、わざわざ言葉にしなくても決まっています。
立地、品揃え、内装、接客のしかた。それらの積み重ねで、ほしいものをサッと買って出ていく自動販売機のような店なのか、相談に乗りながらじっくり選んでもらう接客のある店なのか、店主が選び抜いたものを並べるセレクトショップなのか——お客さんの側にも、なんとなく伝わっています。
長くお店をやってきた方ほど、この「うちはこういう店だ」というものを感覚で持っているかもしれません。
ところが、ECは役割が空白のまま始まりがち
不思議なもので、その同じ会社がネットショップを作るとなると、この「何の店か」がすっぽり抜け落ちることがあります。
「実店舗があるんだから、ネットでも同じように売ればいい」。そう考えて、とりあえず商品を並べる。気持ちはよくわかります。でも、実店舗では自然にできていた「うちはこういう店」という輪郭が、ECには引き継がれていないことが多いのです。
役割を決めないまま走り出すと、そのECは、自動販売機なのか、接客のある店なのか、セレクトショップなのか、自分でもよくわからないものになっていきます。
役割がないと、数字が「見て終わりのもの」になる
役割が決まっていないと、いちばん困るのは「改善しにくくなる」ことです。
ECを始めると、いやでもアクセス解析の数字を見ることになります。訪問数、滞在時間、購入率。数字は出てきます。でも、役割という「ものさし」がないと、その数字をどう読めばいいのかがわからない。結局、見て終わりになってしまう。
本来なら、数字から改善の方向を見つけたり、新しい企画の裏づけに使えたりするはずです。それが、「なんとなくこうかな」という感覚や想像だけの改善案に落ち着いてしまう。
たとえるなら、自動販売機に、ラグジュアリーな接客を求めるようなアイデアが生まれてくることだってあるということです。最短で買えることが価値の店に、ていねいな接客のための施策を足していく。方向がちぐはぐなまま、労力だけがかかっていきます。
大事なのは、「どれを選ぶか」ではない
ここで誤解してほしくないのですが、「正しい役割」がひとつに決まっているわけではありません。
ほしいものを最短で、迷わず買ってもらう自動販売機のような場。
相談に乗りながら、納得して選んでもらう接客のある場。
こちらが選び抜いたものを、提案して届けるセレクトショップのような場。
どれを選んでも構いません。大事なのは、選ぶという「ステップ」をきちんと踏むことです。さらに加えていうならば別にその役割はいずれ変わってもいいのです。とにかく「ステップ」を踏むことが大切なのです。
そして、その手がかりは、すでにお手元にあります。あなたの実店舗です。
あなたの実店舗が「何の店」かを、ネットショップに置き換えると、どうなりますか?
この問いを一度くぐらせるだけで、追うべき数字も、力を入れるべきところも、ずいぶん見えやすくなります。
まとめ
ネットショップを始めるとき、すぐに「どう作るか」へ進みたくなります。でも、その一歩手前で、「これは何の店なのか」を一度決めておく。
たったそれだけのことですが、決めているかどうかで、その後の運営も、改善も、社内での話の通じやすさも、大きく変わってきます。
自分のお店のネットショップを「何の店」にすればいいのか、どう言葉にすればいいのか——ひとりで決めきれないときは、ご相談ください。一緒に整理します。