「ツーベースヒットを打ちたい」という話をよく聞きます。SEO、広告、SNS、いろいろです。ただ、話を聞いていくと、そもそもバットを持っていなかった、というケースに時々出会います。ときには、そのスポーツのルール自体がまだ曖昧なこともあります。
派手なヒットの前に、まず持っておくべきものがあります。今日はその「土台」の話をしたいと思います。
土台は、外から見えない
先日、こんな相談がありました。オーガニック検索からの流入を増やしたい、と。
やりたいことは、はっきりしています。ところが実際にサイトを確認してみると、HTMLがきちんとマークアップされていません。サイトマップもサーチコンソールに送られていません。検索から見つけてもらうための、その手前の準備ができていなかったのです。
こういうとき、多くの場合、放置していたわけでも、後回しにしていたわけでもありません。ただ「気づいていない」のです。もっと言えば、そこに準備すべきものがあること自体を、認識していない、ということも多々あります。
理由はシンプルで、土台は外から見えないからです。ページの見た目には出てきません。ちゃんとマークアップされていても、されていなくても、パッと見のデザインは同じように成立してしまいます。だから、成果が出ないという結果になって初めて、「そういえば足元はどうなっていたっけ」と意識が向くのです。
「専門知識がないから」触れられていない
見えないことに加えて、もうひとつ壁があります。専門知識です。
マークアップとは何か、サイトマップをどう送るのか。このあたりは、知らなければ手の出しようがありません。だから「専門的なことはよく分からないので」と、土台まわりだけがすっぽり抜け落ちてしまいます。
ここで個人的に思うのは、知識がなくても、興味は持てるのになぁ、ということです。中身を全部理解する必要はありません。ただ「そういう準備があるらしい」と知って、少し気にかけてみる。それだけで、抜け落ちる範囲はずいぶん変わってくる気がします。
誰の担当でもないまま、宙に浮く
見えない。知識がいる。この二つが重なると、土台はやっかいな場所に落ちます。誰の担当でもない場所です。
提案の際にヒアリングをすると、「そのあたりは制作会社さんに任せていたので」という言葉によく出会います。依頼した側は、プロがやってくれているはずだと思っています。作った側は、依頼されていないことまではやりません。その隙間に、マークアップもサイトマップも、静かに落ちていきます。
誰も悪くありません。でも、誰もやっていない。土台が宙に浮くというのは、たぶんこういうことなのだと思います。
見えない土台には、二段階ある
もうひとつ、現場で感じることがあります。土台の「見えなさ」には、実は段階があります。
サイトを確認すれば分かる土台。これはまだいい方です。マークアップやサイトマップのように、技術的な不備は、見る人が見れば気づけます。
やっかいなのは、その先です。改善の提案をするためにヒアリングを重ねていくと、もっと手前が曖昧なことに気づきます。そもそも、このサイトは何のためにあるのか。誰に向けているのか。言語化できていないのです。
これは、サイトを眺めているだけでは見えません。対話して、初めて浮かんできます。技術の土台よりさらに奥にある、目的の土台とでも呼ぶべきものです。ここが曖昧なままだと、どんな施策も、狙いの定まらないまま打つことになります。
せめて、ここだけでも
とはいえ、いきなり全部を確認するのは難しいと思います。だから、まずここだけ、という一手を挙げておきます。
ウェブページなら、とにかくHTMLがちゃんとしているか。アウトラインくらいなら、ツールで確認できます。見出しがきちんと階層になっているか、それを眺めるだけでも、土台の状態はずいぶん見えてきます。
さらに言えば、今ならAIにソースを渡して評価してもらうこともできます。「このHTMLの構造はどうですか」と聞けば、それらしい答えが返ってくる時代です。専門知識がなくても、土台を覗く手段はもう手元にあります。知識の壁は、思っているより低くなっています。
派手な施策は、その後でいい
SEO、広告、SNS。打ちたい手はいくらでもあります。どれも、うまくいけば成果につながる大事な一手です。
ただ、その前に一度だけ、足元を確認してみてほしいのです。バットは持っているか。ルールは分かっているか。任せっきりにしていた場所を、一度自分の目で覗いてみる。
派手なヒットは、その後でいい。土台がしっかりしていれば、打った一手は、ちゃんと前に飛んでいきます。