サイトリニューアル

約5分で読めます

サイトリニューアルの目的、「古くなったから」で止まっていませんか

サイトリニューアルのご相談をいただくとき、動機として最も多いのが「サイトが古くなったから」というものです。次に多いのが「操作しづらい(使いづらい)から」。どちらも、ご相談のきっかけとしてはよく聞く入り口です。

ただ、この動機をこの言葉のままにしてリニューアルを進めるのは、少し心配な部分があります。動機としては自然でも、「目的」としては少し薄いのです。今回はその理由と、動機を目的にまで磨き上げるプロセスについて書いてみます。

「古くなった」はほぼ見た目の話

「古くなった」という動機は、ほぼ見た目についての話です。デザインのトレンドから外れている、他社と比べて印象が弱い、そういった感覚的な判断が多い。

もちろん、見た目の刷新自体は意味のあることです。しかし、それだけを目的にリニューアルを進めると、「綺麗にはなったけれど、サイトの役割は変わらない」という結果になりがちです。

「使いづらい」には、複数の課題が混ざっている

「操作しづらい」「使いづらい」という動機は、もう少し複雑です。

この言葉の中には、例えば機能的な課題見た目の課題が混ざっています。「ナビゲーションが見つからない」は見た目寄り、「問い合わせフォームの項目が多すぎる」は機能寄り、という具合に。しかし多くの場合、発注側の方は両方をまとめて「使いづらい」と表現されます。

これは当然のことで、発注側の方はWebサイトの制作者ではないからです。専門家ではない方に、機能と見た目を切り分けて言語化してほしい、というのは無理な話だと私は思っていますし、だから私のような仕事があると思っています。

ただ、この解像度が荒いままリニューアルを進めてしまうと、課題が解消されないまま新しいサイトができあがってしまいます。「使いづらい」という動機は、そのままでは目的として機能しません。

解像度を上げる仕事は、情報設計者の領域

では、どう解像度を上げるか。私がやっていることはシンプルで、まず自分で触ってみます。触りながらユーザーの行動を想像し、自分の中で一旦整理をかける。「なりきる」という自分の特性を活かして、複数の利用シーンを頭の中で再生します。

その上で、「どのページで」「何をしようとしたときに」「誰から聞いた声なのか」といった問いをクライアントに返していく。この往復の中で、「使いづらい」の内訳が少しずつ見えてきます。

ここが情報設計(Information Architecture / IA)の仕事の本丸です。動機を目的まで磨き上げるには、情報の構造と利用者の行動を重ねて見る視点が必要になります。発注側の方だけで完結させるのは、なかなか難しい部分でもあります。

自社サイトをリニューアルしたときの話

少し自分の話をします。

当社のサイト(cdef.site)は、会社設立に合わせて急いで作ったため、ページ構成の検討が荒い状態でした。トップページに多くの情報を詰め込み、あとはブログで引っ張っていく、というシンプルな構造です。

運用していく中で、トップページ内のナビゲーションに計測用のクリックイベントを設定しました。どの項目が触られているかを見るためです。

結果、会社情報や代表メッセージのリンクが、想定以上にクリックされていたことが見えてきました。

この瞬間、リニューアルの目的が言語化できました。「古くなったから作り直す」ではなく、「会社情報や思想への関心に応えるため、ページを分散させて独立した導線を持たせる」という目的です。

3月にリニューアルを実施したあと、狙い通り、分割して独立させた会社情報関連のページへのアクセスは、一定量確保できています。

動機と目的の違い

この経験を通して、動機と目的の違いを改めて感じました。

動機は「古くなった」「使いづらい」という、スタート地点の感覚です。目的は、その動機を分解し、データや観察で検証し、「何を、どう変えるか」まで具体化したものです。

動機のままリニューアルを始めると、「綺麗になった気はするけれど、何が変わったのかよく分からない」という結果になりやすい。一方で、目的まで磨き上げてから始めると、リニューアル後に「狙った通りの変化が起きている」ことを確認できます。

動機を目的に変える作業は、一人では難しい

ここまで書いてきて感じるのは、この「動機を目的に変える作業」は、発注側の方が一人で抱え込むには難しい仕事だということです。

「使いづらい」を機能と見た目に分解し、どのページのどんなシーンで起きているかを具体化し、データや計測で検証する。ここまで進めてはじめて、リニューアルの目的は解像度を持ちます。

これはまさに情報設計の仕事そのもので、サイト制作そのものよりも、ずっと手前の段階にあります。

もし検討中の方がいたら

もし今、サイトリニューアルを検討されていて、動機が「古くなったから」「使いづらいから」のあたりで止まっているなら、一度立ち止まってほしいと思います。

その動機、少し掘ってみると、本当の目的が別のところにあるかもしれません。そして、その掘り下げは、情報設計の専門家と一緒にやることで解像度が一気に上がります。

当社(コミュニケーション設計所)では、この「動機を目的に変える」段階からのご相談をお受けしています。リニューアルの実施そのものよりも、その手前で何を整理すべきか、現状のサイトから何が見えるか、というところから一緒に考えさせてください。

「まだリニューアルを決めたわけではないけれど、そろそろ考え始めている」という段階のご相談、とても歓迎です。むしろ、そのタイミングが一番お役に立てる段階かもしれません。

お問い合わせはこちら

著者:稲本浩介

著者:稲本浩介

コミュニケーション設計所代表 / 情報アーキテクト

「わかりやすく伝えるにはどうしたらいいか?」を常に考える福岡の情報アーキテクト(IA)。前職では主にWebサイト制作にディレクターやエンジニアとして関わり、ホームセンターや老舗菓子メーカーのEC事業の構築および運用にゼロから携わる。その活動は、ウェブサイトの枠に限定せず、動画やイベント実施などコミュニケーションという視点でのわかりやすさを追求。大学や社会人講座、企業における講演経験もあり多方面にて活動中。

▶ X(Twitter):@sevenina