ウェブサイトの役割を見失わないために|『わかりやすくしなくていい』と言われた日

公開日:2025/11/20

この記事をざっくりまとめると・・・

ウェブサイトは「わかりやすければいい」わけではない。10年前のある提案で学んだ、サイトの本当の役割とは。コミュニケーション全体の中で、あなたのサイトは何を担っていますか?

・・・ということが書いてあります。

「わかりやすくしなくていいです」

今から10年ほど前のことです。ある機械メーカーのクライアントに、ウェブサイトの改善提案を持ち込みました。そのクライアントは、産業用の機械を使ったソリューションを提供している会社で、製品カタログをお持ちでした。

そのカタログを見たとき、私は「これはもっと良くなる」と感じました。掲載されているイラストが平面的で、製品の構造が分かりにくかったのです。

「このイラストを3D化して、ウェブサイト上で分かりやすく見せましょう。そうすれば、お客様がもっと製品を理解できるようになります」

自信を持って提案した私に、先方の担当者から返ってきた言葉は、予想外のものでした。

「わかりやすくしなくていいです」

え? 最初は耳を疑いました。分かりやすくすることが、ウェブサイトの役目なんじゃないか。そもそも分かりやすいことは正義だろ。

しかし、その後に続いた言葉を聞いて、私は頭を撃ち抜かれたような衝撃を受けることになります。

「わかりにくいと、問い合わせが発生するんです。問い合わせが発生すれば、うちの営業がさらなる提案に繋げることができます。わかりやすくしすぎたら、お客様が勝手に納得して、そこで終わってしまう可能性だってあるんですよ」

その瞬間、私は自分がいかに狭い視点でウェブサイトを見ていたかに気づかされました。
ちゃんと伝える、ちゃんとコミュニケーションをとるとはどういうことか、、その本当の意味をそのとき学んだ気がします。

サイトは、コミュニケーション全体の一部でしかない

ウェブサイトのリニューアル相談を受けるとき、よくこんな言葉を耳にします。

「サイトで売上を上げたい」
「リニューアルしてもっと良いサイトにしたい」

この想いは、すごく理解できます。実際、多くの企業がウェブサイトに期待を寄せていますし、それ自体は間違っていません。

でも、ちょっと立ち止まって考えてみてください。

あなた自身の体験で、サイトだけでコミュニケーションが完結したことってありますか?

例えば、ECサイトで素敵な商品を見つけて購入したとします。サイトのデザインも素晴らしく、商品説明も完璧でした。でも、届いた商品の包装が雑で、箱が潰れていて、同梱の手紙もなかった。その時、あなたはどう感じるでしょうか?

あるいは、企業のコーポレートサイトを見て、「この会社に相談してみよう」と思って問い合わせをしたとします。返信は来ました。でも送られてきた営業資料が雑で、誤字だらけで、提案内容もサイトで見た印象と違っていた。その時、どう感じるでしょうか?

きっと、残念な気持ちになるはずです。

サイトだけでは、そもそも足りないんです。

逆に言えば、サイトには「役割」があるはずなんです。コミュニケーション全体の中で、サイトは何を担っているのか。その次に何が続くのか。その全体像を見失ったまま、「とにかくサイトを良くしよう」と進めてしまうと、チグハグなことが起きてしまいます。そもそも「良く」って何に向かっての「良く」なのでしょう?

「全部載せたい」という思い込み

サイトの役割を考えるとき、よく陥りがちなのが、「サイトには全部載せた方がいい」という思い込みです。

これは、実はビジネスモデルとも直結する考え方です。冒頭の「わかりやすくしなくていい」という話がまさにそうでした。あのクライアントにとって、カタログの役割は「完璧に理解してもらうこと」ではなく、「興味を持って問い合わせてもらうこと」だったのです。これはウェブサイトでも同じことが言えますし、すべてのコミュニケーションツールにおいても同じ考え方を忘れてはいけません。

すべてをサイトで説明しきってしまうと、問い合わせが発生しません。問い合わせが発生しなければ、営業が提案する機会も失われます。あの会社のビジネスモデルでは、営業との対話の中でこそ、最適なソリューションが生まれるのです。

つまり、サイトの役割は「情報を伝えること」だけではなく、「次のアクションへの橋渡し」なのです。

どこまで伝えて、どこから先は別の手段に任せるのか。その線引きこそが、サイトの役割を定めることなんです。

サイトがない場合を想像してみる

では、どうやってサイトの役割を定めていけばいいのでしょうか。

私がよく使う手法のひとつは、「サイトがない場合をちょっと想像してみる」ことです。

もしウェブサイトがなかったら、あなたはどうやってお客様に自社のことを伝えますか?
チラシを配りますか?電話をかけますか?展示会に出展しますか?直接会いに行きますか?

その時、あなたは何を伝えて、どんな反応を期待しますか?

実は、ウェブサイトがあるからといって、特別なことが発生しているわけではないんです。もともと人と人とのコミュニケーションにおける「何か」が、サイトに置き換わっているだけ。そして、それが便利に、速く、広く届くようになっているだけなのです。

だから、サイトの役割を考えるときは、まず「人と人とのコミュニケーションだったら、どうするか」を考えてみてください。その本質が見えてくれば、サイトで何をすべきか、何をすべきでないかも見えてきます。

次のアクションを想像する

もうひとつ、大切な視点があります。

それは、「サイトを見た後、ユーザーに何をしてほしいのか」を明確にすることです。

これは、以前の記事「サイト改善は『動詞』で考える。小さなジャーニー設計のすすめ」でもお伝えしたことですが、ユーザーの行動を起点に考えることで、サイトの役割が見えてきます。

  • – 問い合わせをしてほしいのか?
  • – 資料をダウンロードしてほしいのか?
  • – 実店舗に来てほしいのか?
  • – 電話をかけてほしいのか?
  • – 商品を購入してほしいのか?

そして、その「次のアクション」の先には何がありますか?

問い合わせの後には、営業との商談があるかもしれません。
資料ダウンロードの後には、メールでのフォローがあるかもしれません。
商品購入の後には、梱包と配送と、アフターサポートがあるかもしれません。

その一連の流れ全体の中で、サイトはどこを担当しているのか。

これを整理することで、サイトで何を伝えるべきか、何を伝えなくていいのか、どんな導線を作るべきか、どの数値を追うべきかが、すべて見えてきます。

役割が明確になれば、「全部載せる」必要がないことも分かります。むしろ、載せすぎることで次のアクションが生まれなくなる可能性すらあるのです。

あなたのサイトは、何を担っていますか?

「わかりやすくしなくていい」

あの言葉は、私にとって大きな学びでした。ウェブサイトは、それ単体で完結するものではなく、コミュニケーション全体の一部である。そして、ビジネスモデルや営業プロセス、顧客体験のすべてと連動している。

サイトの役割は、すべてを伝えることだけではない。次のアクションへの橋渡しをすることなのです。

もし、あなたが今「サイトをリニューアルしたい」「サイトで成果を出したい」と思っているなら、まず一歩立ち止まって、こう問いかけてみてください。

「このサイトは、何のためにあるのだろう?」
「サイトを見た人に、次にどうしてほしいのだろう?」
「その先には、何が待っているのだろう?」

その答えが見えたとき、あなたのサイトは本当に機能し始めるはずです。

明日からできる一歩は、シンプルです。紙とペンを用意して、「サイトを見た後のアクション」を書き出してみてください。その先に何が待っているか、想像してみてください。

コミュニケーション全体の中で、あなたのサイトがどこを担っているのか。その役割を見つけることができたら、次にやるべきことは自然と見えてくるはずです。

代表 稲本浩介

著者:稲本浩介

コミュニケーション設計所代表/情報アーキテクト
「わかりやすく伝えるにはどうしたらいいか?」を常に考える福岡の情報アーキテクト(IA)。前職では主にWebサイト制作にディレクターやエンジニアとして関わり、ホームセンターや老舗菓子メーカーのEC事業の構築および運用にゼロから携わる 。その活動は、ウェブサイトの枠に限定せず、動画やイベント実施などコミュニケーションという視点でのわかりやすさを追求。大学や社会人講座、企業における講演経験もあり多方面にて活動中。
▶︎ X(Twitter): @sevenina

FAQ

ときどきお尋ねいただくことをまとめました。

ECサイトの構築はできますか?
ご要望やご予算に応じて、モールへの出店、出品、自社ECの構築など最適なものをご提案いたします。ECサイトと言っても、商品構成や運用体制、顧客との関わり方などによって、構築方法や運用方法は大きく異なります。しっかりとした継続運用ができる環境を整えることができるよう一緒に考えましょう。
なお、弊社はmakeshopとパートナー契約を結んでおります。
商品の販促に関して相談することはできますか?
もちろんです。私たちはデジタルを活用した販促活動にこだわることなく、時にはアナログ(フィジカル)な販促活動もご提案します。様々な手法やツールを網羅的に把握することで最適解を導き出し、ご提案いたします。
ウェブサイトの解析はできますか?
主に、GoogleAnalytics(GA4)を活用し、解析を行います。サイトの特性に応じて解析期間などを設け、定期的にレポーティングも可能です。可能であれば一定期間のお取り組みの中で解析と改善を繰り返すPDCAサイクルを回すことができればと考えております。