
「音」だけで会話されている違和感
以前、ある打ち合わせに参加した時のことです。
会議では、やたらと3文字英語が飛び交っていました。
「CVR」「CPA」「CTR」「CTA」…
全員がそれなりに理解しているのでしょう。
でも、私にはこう聞こえていました。
「シーブイアール」という『音』だけで会話が進んでいる。
もちろん、当時の私自身がその音を聞いて
「CVR」がすぐに頭に浮かぶほどの経験がなかったこともあります。
ただ、こんな疑問が湧いてきました。
「周りのみんなは、本当に理解しているのだろうか?」
言い方は悪いかもしれませんが、
すごく表面的な会話のように聞こえてしかたなかったのです。
CVRという言葉を使う前に
それ以来、クライアントとの打ち合わせで
「CVR」という言葉が出てきたとき、私はこう聞くようにしています。
「CVRという言葉で、何を測っていますか?」
そして、多くの場合、
この質問への答えが一つに定まらないことがあります。
よくある認識のズレ
ズレ1:分母が定まっていない
「CVR 2%です」
そう言われたとき、私はまず分母を確認します。
- セッション数に対する割合?
- ユニークユーザー数に対する割合?
- 特定ページの閲覧数に対する割合?
- 広告のクリック数に対する割合?
関係者によって、どこの数字を取っているのかが定まっていない。
定まっていないがゆえに、
出される数字だけで良し悪しを判断している。
それは果たして、良し悪しと言えるのでしょうか?
ズレ2:コンバージョンの定義が違う
次に確認するのは、コンバージョンの定義です。
[前回記事へのリンク:動詞駆動設計]
「コンバージョンとは、何を指していますか?」
シンプルにこう聞きます。
すると:
- 👧 Aさんは「フォーム送信」を指している
- 👦 Bさんは「資料請求完了」を指している
- 👩🦰 Cさんは「商談化」を指している
同じ「CVR」という音、違う意味。
分母がズレ、コンバージョンがズレる。
すると、計算される率が何の値なのか、さっぱりわからないはずです。
なのに、音だけで妙な共有がされている。
IA視点での違和感
私は情報アーキテクト(IA)として、
「伴走型支援」というスタイルで仕事をしています。
その先にあるのは、「いいコミュニケーションができる世界」。
そこにクライアントを導いていくために、
様々な施策を検討するわけですが、
その導きにおいて一番重要視しているのが、現在地の把握です。
現在地がわからないとナビゲーションできない
カーナビを想像してください。
現在地がわからなければ、
「次を右に曲がってください」という指示も意味がありません。
こちらの意図と違う方向に進んでしまう。
これは、CVRでも同じです。
コンバージョンが意味するものがズレている時、
こちらが提案する施策に対しての正しい評価も行えません。
やる意味すら、腹落ちできないはずです。
(この「現在地とナビゲーション」については、次回詳しく書きます)
伴走は「一緒に走る」こと
伴走型支援とは、一緒に走ることです。
理解や認識のズレが起きている場合、
伴走ができず、ただクライアントが無意識に引っ張られるだけになってしまいます。
そのためにはズレを極力なくすことが重要だと思っています。
だから、会話の途中で「なんか会話にズレがある…」ような気配を感じた時、
もしそれが共通認識であったとしても、あえて聞くようにしています。
(たぶん、めんどくさいやつだろうなぁ、と思いながら)
では、どう整理するか
では、実際にどうやって認識を揃えているのか。
そこまで難しいことはしていません。
1. いろんな意味で捉えることができるワードは言い換える
「CVR」ではなく:
- 「サイト訪問者に対する問い合わせフォーム送信率」
- 「広告クリックに対する資料請求完了率」
- 「問い合わせに対する商談化率」
このように、具体的に言い換えます。
2. 資料に記載する時は計算式も併記する
問い合わせ率:2.5%
(問い合わせフォーム送信数 ÷ セッション数)
このように、何を何で割っているのかを明示します。
3. 違和感を持った時はすぐに確認する
「今おっしゃった『CVR』は、何を指していますか?」
シンプルに聞きます。
言葉は「地ならし」から
言葉にはいろんな意味が込められています。
だから、自分が納得できる変換をするべきです。
そして、それはお互いに行うべき初期段階の地ならしだと理解してほしいのです。
CVRという音、何を意味していますか?
次に「CVR」という言葉を使う時、
または聞く時、こう確認してみてください。
「その『CVR』は、何を何で割った数字ですか?」
この一言が、認識のズレを防ぎます。
そして、この地ならしができて初めて、
前回記事で書いた
「何を見るべきか」の議論ができるようになります。
チェックリスト
□ CVRの分母は明確ですか?
□ コンバージョンの定義は揃っていますか?
□ 計算式を文章で説明できますか?
□ 関係者全員が同じ理解ですか?
□ 資料に計算式を併記していますか?
□ 違和感を感じた時、すぐ確認していますか?
まとめ
「CVR」という音だけで会話を進めない。
まず、言葉の意味を揃える。
お互いに納得できる変換をする。
これが、すべての施策の前提となる地ならしです。
次回は、「なぜ現在地の把握が重要なのか」を
ナビゲーションの比喩を使って解説します。
関連記事
- CVRと実数、両方見るべき理由
- 動詞駆動設計
- 次回:ナビゲーションにおいて現在地が大切な理由(予定)
こんな方に読んでほしい
- 社内でCVRの認識がズレていると感じる
- マーケと営業で数字の話が噛み合わない
- 外部パートナーとの認識を揃えたい
- 伴走型の支援に興味がある
- IAや情報設計の視点を知りたい

著者:稲本浩介
コミュニケーション設計所代表/情報アーキテクト
「わかりやすく伝えるにはどうしたらいいか?」を常に考える福岡の情報アーキテクト(IA)。前職では主にWebサイト制作にディレクターやエンジニアとして関わり、ホームセンターや老舗菓子メーカーのEC事業の構築および運用にゼロから携わる
。その活動は、ウェブサイトの枠に限定せず、動画やイベント実施などコミュニケーションという視点でのわかりやすさを追求。大学や社会人講座、企業における講演経験もあり多方面にて活動中。
▶︎ X(Twitter): @sevenina



