AIとの壁打ちを重ねるなかで、ふと気になることがあります。PDCAのことです。
ビジネスの現場でこれほど語られてきたフレームワークも珍しいと思います。書籍も多く、研修でも頻繁に登場します。それでも「PDCAがうまく回っている」という声を、私はあまり聞きません。自分自身の経験を振り返っても、同じことが言えます。
PDCAが回らない理由は「P」にある
ある本にこんな指摘がありました。PDCAが機能しない最大の原因は、Pに時間をかけすぎることだ、と。
計画を立てることに注力するあまり、実行であるDに進めない。あるいは、完璧な計画を目指すうちに状況が変わってしまう。Pで止まったまま、サイクルは始まってすらいないケースも多いようです。
思い当たる節がある方は、少なくないのではないでしょうか。
AIはPもDもやれます
生成AIが使えるようになって、状況は大きく変わりました。AIは計画を立てることも、実行することも、かなりの精度でこなせます。リサーチ、文章の生成、分析のたたき台——かつて人が時間をかけてやっていたことが、驚くほど速く形になります。
「Pに時間がかかりすぎる」という問題は、少なくとも技術的には解消しつつあります。
それでも、前に進めない状況は残ります。なぜでしょうか。
残る仕事は「決断」です
AIがPもDも担えるとしても、PからDへ進む判断は人がやるしかありません。
「これでいく」と決めること。「もう少し検討する」ではなく、「進む」と決めること。その一歩は、AIには踏み出せません。
これがAI時代に人に残された仕事だと、私は思っています。そして皮肉なことに、実行コストが下がった分だけ、「決断」という行為の重みがむしろ増している気がします。ツールが揃っているのに動けないとしたら、それは決断の問題だからです。
経験が、判断基準をつくる
では、どうすれば決断できるようになるか。判断には根拠が必要で、その根拠は知識・知恵・倫理観、言い換えれば自分の中の哲学から来ます。
ここで気をつけたいのが、AIに任せて終わりにするフローです。アウトプットを受け取るだけで、プロセスに関わらない。一見効率的に見えますが、そのやり方では経験が積み上がりません。
なるべく自分がフローに介入すること。AIが出したものを読み、判断し、修正し、また判断する。その繰り返しの中で、「自分ならこうする」という感覚が育っていきます。
それが積み重なったとき、判断基準ができます。さらに積み重なったとき、それは哲学と呼べるものになると思っています。
まとめ
AI時代のPDCAを回すために必要なのは、より良いツールでも、より精度の高い計画でもありません。「進む」と決断できる自分をつくることです。
そのためには、フローの外に出てはいけません。体験と経験を手放さないこと。それが、AI時代に人が持つべき判断軸の、出発点になると思っています。